制限行為能力者

【制限行為能力者について】

まず契約のことを《法律行為》または《行為》といいます。

 

制限行為能力者とは正常な判断能力(これを意思能力といいます。)がない人のことです。

このような人の行為(契約)を《取り消す》権利を与えて《保護》するのが目的です。

 

例えば1,000万円のマンションを買うといった場合、正常な判断力がある人であれば問題ないですが、子供や痴呆などがある老人などの判断力がない人が契約を結んでしまいそれが取り消せなかったら大変なことになります!

 

 

〜無効と取り消しの違い〜

無効→初めから全くなんの効力のない、つまりなにも言わなかったことと同じことです。

取り消し→取り消されるまでは一応有効だが、取り消されると初めから無効だったことになります。

 

制限行為能力者には次の4種類があります。

 

①未成年者

②成年被後見人

③被保佐人

④被補助人

 

さらにこの4種類の人の保護者を《法定代理人》といいます。

 

大事なのは①〜③です♪

 

 

 

①未成年者

未成年者とは《20歳未満》の人のことです。ただし、《婚姻(結婚のこと)》すると20歳未満でも成年者とみなされることになっています。

所帯を持っているのに子供扱いするのはいかがなものか?結婚しているので一人前に扱いましょう!という趣旨みたいです。

 

未成年者の法定代理人(保護者)は《親権者》または《未成年後見人》です。

親権者とはそのまま親のことで、未成年後見人とは親がいない子供に付けらえる法定代理人(保護者)の事です。

 

〜法定代理人の4つの権限〜

1.取消権

 

未成年者が自分一人でやった契約は、自由に取り消す事ができます。

この取り消すという事は未成年者自身もできますが法定代理人にもできます。

つまり、取消権とは本人も法定代理人にもあるという事です。

 

2.同意権

 

未成年者が法定代理人に同意を得て契約すると、その契約は完全に有効になります。

つまり取り消せない契約となるわけです。

この同意を与える権利の事を同意権と言います。

 

3.追認権

 

追認とは事後承認の事です。

未成年者が法定代理人の同意を得ずに契約をしても、あとから法定代理人が追認することではじめから同意が与えられてたのと同じことにできる権利です。

ちなみに大事なのは『追認の時から有効になる』のではなく『契約の当初にさかのぼって有効になる』という事です。

例えば7月1日に契約したものを8月1日に追認しても8月1日からではなく7月1日から有効の契約になります。

 

4.代理権

 

法定代理人が未成年者に代わって契約できる権利です。

 

〜未成年者のみでも成立する契約または、取り消せないものの例〜

権利を得るだけの契約(無料で物をもらうなど) 

 

義務を免れる契約(借金を棒引きにしてもらう)  

 

法定代理人から処分された財産(学費、お小遣い)を自由に処分することができます。

 

法定代理人から営業を行うこと許可された場合には、その営業に関する契約は未成年者が一人でできます。

 

《上の二つの契約は未成年者が一人でやっても損しないものなので、できるということです。》

 

 

 

②成年被後見人

成年被後見人とは重い精神障害のために判断力(※事理を弁識する能力)が全くなくて《後見開始の審判》を受けた人のことです。

《後見開始の審判》とは例えば1億円と1円の区別もつかない、などの重い精神障害の人を保護するために家庭裁判所が『この人を成年被後見人とします。』という審判をすることです。

被後見人=大人だが後見を受ける人

 

成年被後見人の保護者(法定代理人)は成年後見人です。

 

~成年被後見人が取り消せるもの~

成年被後見人は未成年者よりも判断能力が無い人、むしろ判断能力0といえる人のことなのです。

なので未成年者と異なり、成年後見人の同意を得た上でやった契約だとしても取り消せることになっています。

さらに損しない契約(権利を得るだけの契約、義務を免れる契約)も取り消せます。

なぜならその契約の意味すら理解できないからです。

 

できるのは、日用品の購入などの《日常生活上の購入》のみです。

 

成年後見人が成年被後見人の居住している建物、敷地の売買・賃貸借・抵当権の設定を行う場合は家庭裁判所にて許可が必要です。

 

 

成年被後見人は《理事を弁識する能力》が回復することもありますが、それでも後見開始の審判が取り消されない限り成年被後見人です。なので判断力が《完全に回復》している間に契約したものでも取り消せます。

 

あとは未成年者と同じです。

 

取消権、追認権、代理権、また未成年後見人と成年後見人はどちらとも複数いても大丈夫です。

 

 

 

③被保佐人

成年被後見人ほど重くはないですが、独り立ちなどは厳しいぐらいの《相当弱い》人の保護のために家庭裁判所が《保佐開始の審判》をします。

この《保佐開始の審判》を受けた人のことを被保佐人といいます。

 

被保佐人の保護者(法定代理人)は保佐人です。

 

~被保佐人が取り消せるもの~

わかりやすくすると、

成年被後見人>未成年者>被保佐人

の順に保護が必要になるます。

 

つまり未成年者よりはしっかりした人なので被保佐人は原則として自分一人の判断で契約することができるのです。

しかし一定の《重大な契約》大損する恐れのある契約をするときだけは、保佐人の同意が必要になります。

この同意がない契約は取り消せるのです。

 

その《重大な契約》とはこのようなものがあります。

 

1.土地の売買、《5年》を超える賃貸借(5年ちょうどは取り消せません)

 

2.建物の売買、《3年》を超える賃貸借・増改築の発注

 

3.高額商品の売買

 

4.保証人になること。

 

上記以外の契約であれば保佐人の同意がなくても被保佐人が自分一人ですることができます。

 

また取消権、追認権については、成年被後見人と未成年者と同じです。

 

 

 

④被補助人

被補助人とは簡単にいえば被保佐人よりも格段に《行為能力者に近い》ですが、普通の行為能力者よりも判断力が弱い人のことです。

よって同意がないとできない契約の種類は被保佐人よりも少ないですが、あとは被保佐人と同じです。

そして《補助人》という保護者(法定代理人)が付けられます。

 

 

未成年者・成年被後見人・被保佐人の問題点

【相手方の催告権について】

制限行為能力者の保護も必要ですが契約する側の立場も考えなければいけません。

そのため、契約した者は制限行為能力者の保護者(法定代理人)に一ヶ月以上の期限をつけて《追認するかどうかの催促》ができるのです。この催促は正式には《催告》といいます。この制限行為能力者のうち被保佐人だけは《被保佐人本人》に保佐人に同意を得るようにと催告することができます。

そしてとても重要なのは、この催告に《答えを出さなかった場合》のことです。

 

保護者に催告した場合、追認するかの答えを期限までに出さないままでいるとその契約は《追認》されたことになります。

しかし被保佐人本人に催告した場合は期限が過ぎても追認したことにはならず、むしろ《取り消された》ことになります。

 

 

【制限行為能力者がの嘘について】

制限行為能力者が「私は行為能力者です。」と嘘をついて契約した場合、その契約は《取り消せなくなります》。

さらに「未成年者が親の同意を得ています。」という嘘をついた契約にしても同様、その契約は《取り消せません》。

なぜなら同意を得ましたという嘘も私は行為能力者です。という嘘も結果的には同じことだからです。

 

 

【いつまで取り消せるかについて】

制限行為能力者がした契約は制限行為能力者が《行為能力者になってから5年》または《契約から20年経った》場合には取り消せなくなります。

制限行為能力者が行為能力者になるというのは具体的にいうと、《未成年者が成人になること》または《後見開始の審判・保佐開始の審判が取り消される》という事です。

 

 

【法廷追認について】

制限行為能力者がした契約の後に保護者(法定代理人)が《1.請求・2.履行・3.譲渡》するとその契約は追認されたことになります。

 

1.相手方に契約の履行を《請求》する。

 

2.こちらの契約を履行する。

 

3.契約によって手に入れたものを第三者に譲渡する。

 

保護者ではなく制限行為能力者が上記の3つをした場合はもちろん法廷追認になりませんが、制限行為能力者が行為能力者になってから上記の3つをすると法廷追認になり取り消せない契約になります。

 

 

【第三者について】

こちらは例に出して説明させていただきます。

 

制限行為能力者Aが独断で(保護者の同意を得ずに)契約相手Bに土地売ります。そして契約相手のBがその土地をさらにC(第三者)に売ります。

 

つまり土地が

制限行為能力者A→契約相手B→Bの契約相手C(第三者)

とCに渡るわけですが、この場合AがBとの契約を取り消してC(第三者)から土地を返してもらいたいとするとどうなるのでしょうか。

答えは《返してもらえる》のです。

そしてBがその土地を制限行為能力者から買い取った土地だとC(第三者)が知らなかったとしても、《契約の取り消しができる》のです。

 

民法では知らないということを《善意》といい、知っていることを《悪意》といいます。

そして主張することを《対抗》といいます。

 

とてもCがかわいそうな気がしますが…

 

制限行為能力者Aの契約の取り消しは善意の第三者Cに対抗できるのです。

 

そしてCが建物の所有権移転登記を得ていたとしても、AはCから建物を取り返せるのです。


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