意思表示

【意思表示について】

意思表示について大事なのは

 

①詐欺

②脅迫

③錯誤

④虚偽表示

⑤心裡留保

 

この5つです。

順に説明していきたいと思います。

 

 

①詐欺

詐欺にあって契約させられた被害者は契約を《取り消せます》。

つまり土地を売ろうとしていたAが詐欺師Bに土地を騙されて安く売ってしまった場合、その契約は取り消せるので土地も取り返せます。

しかしその詐欺師Bが善意(それを知らない)の第三者Cに転売してしまった場合は、第三者Cが善意(知らなかった)のためAは騙されて売った土地だとしてもCから取り返すことが《できない》のです。

第三者Cが善意ではなく悪意(知っている)場合はもちろん土地は取り返せます。

そして被害者Aは善意(知らなかった)の第三者Cには対抗できませんが、詐欺師Bにはこの売買契約に対する対抗(取り消しの主張)ができます。

また転売でなく、詐欺師Bが被害者Aからだまして契約させた《借地権》や《抵当権》を第三者Cに設定をした場合でも被害者AはCに対し《対抗ができない》のです。

そして詐欺をはたらかせるのが契約する相手ではなく第三者である場合もあります。

たとえばAに対し第三者のCがBと契約すれば得すると嘘をついてAとBを契約させます。

その場合、Bが「AとCの間にそんな話があったなんて知らなかった」のならAはBとの取り消しは《できません》。

Bが知っていた場合はもちろん《取り消せます》

 

 

②脅迫

脅迫されて契約をしてしまった場合、被害者は契約を《取り消せます》。

そしてこの取り消しは①の詐欺と違い善意(知らなかった)第三者にも対抗できるのです。

第三者がかわいそうな気がしますが、被害者には詐欺と違い落ち度がまったく無いためです。

たとえ第三者が善意で過失がなかったとしても、所有権移転登記を得ていても同じことです。

そしてこちらの脅迫されて契約した借地権や抵当権については転売同様、善意の第三者にも《対抗できます》。

また脅迫されて第三者と契約した場合、詐欺のときには善意の第三者に対抗できないと書きましたが、脅迫されて契約をしているので、こちらも落ち度がないとし、《取り消せます》。

 

※①詐欺・②脅迫の時効は契約してから20年です。

20年経ってしまったものに関しては《取り返せません》

 

 

③錯誤

錯誤とは勘違いのことです。

錯誤の場合契約の重大なポイントについて勘違い(《要素の錯誤あり》)していて、その勘違いに重大な不注意がなかった(《重過失なし》)場合、この契約は無効にできます。

 

要素の錯誤の例

・隣の更地もついてる土地を購入していたと思ったが実は別々の土地だった。

・3LDKのマンションを購入していたと思っていたがよく見たら収納部屋のある2LDKだった。

 

動機の錯誤の例

・新しく駅が近くにできるという噂を聞いて地価があがると思って土地を買ったが、駅はできなかった。

 (↑こちらの場合は《動機の錯誤》といい、相手方に動機を示さないと要素の錯誤になりません。)

 

過失については重大な過失(重過失)、軽い過失(軽過失)があります。

錯誤の場合、重過失がなければ無効にできると書きましたが、無過失のように過失がまったくなければということでなく、あくまで《重大な過失》です。

軽過失などの軽い過失であれば《契約を無効》にできます。

錯誤の無効は善意無過失の第三者にも《対抗できます》。

Aが勘違いをしながらBに土地を売ってしまい、さらにBがその土地をCに売ってしまったとしても、Aに重大な過失がなければCが善意無過失だったとしても《取り返すことができる》のです。

 

 

④虚偽表示

虚偽表示とは《相手方と示し合わせて、架空の契約を作ってしまうこと》ですので原則では虚偽表示で作った契約は無効になります。

例えるとAが遺産相続などでたくさんの土地を所有したとします。しかし周りの人に資産家だと思われたくなかったので親友Bと示し合わせてBに譲渡していたことにします。この場合AとBの間には本当に契約するという意思がないので、この契約は無効です。たとえ登記名義をBにしていたとしても土地所有権はAにあるのです。

しかしこのBがAを裏切り、何も知らない(善意の)Cにこの土地を売りました。するとAはわざと周りに勘違いさせているのでAを保護する必要がなく善意のCに(第三者)に《対抗できない》のです。つまり土地を返してもらうことができないのです。

それはたとえCに過失があっても、登記を得ていなくてもです。

 

このCがAとBの虚偽表示だと知っていた(悪意)の場合はもちろん土地を返してくださいといえます。

 

AはCが悪意でない限りCに《対抗できません》が、Cが登場してもAとBの間の虚偽表示は無効なので、Bには《主張することができます》。

転売以外も同じです。

 

当事者と第三者の見極め方

第三者の中には虚偽表示の後で《新たに》利害関係をもった人と虚偽表示の《前から》利害関係をもっていた人がいます。前者は第三者で良いのですが、後者は第三者でなく当事者になります。この当事者には対抗できます。

詐欺の場合でも一緒です。

 

 

Aに債権者がいる場合

例えばAがBにお金を借りているとします。

Bは《債権者》でAは《債務者》ということになります。

Aがなかなかお金を返してくれないので、BはAの土地を差し押さえようとしました。

しかしその前にA《債務者》がCと示し合わせて架空の売買契約《虚偽表示》をします。

これだけであったらB《債権者》はCに「Aの土地を差し押さえしますので返してください。」や「登記の抹消をしてください。」といえます。

しかしこのCがこの土地をさらに善意(何も知らない)の第三者Dに転売したとすると大変です。

A《債務者》はD《第三者》に「Cとの契約は架空の売買契約《虚偽表示》だったから無効です。」と言えないので、必然的にB《債権者》もD《第三者》に「土地を差し押さえるので返してください。」とは言えないのです。

ちなみにAがCやDに土地の返還を促したりするのを行使といい、さらにこの行使を代わりにBがすることを《代位行使》といいます。

 

 

《第四者》がいる場合

例えばAの土地をBに売買したとAとBの間で虚偽表示をしているとして、このBがC《第三者》にこの土地を転売しさらにこのC《第三者》がD《第四者》に転売するとします。

★A→B→C《第三者》→D《第四者》★

この場合AはDに「Bとの契約は虚偽表示だったので、土地を返してください。」と言える(対抗できる)のでしょうか?

答えはC《第三者》とD《第四者》がともにこの虚偽表示だったということを知っていた《悪意》ときのみ、「土地を返してください。」といえます。

しかしCが悪意でDが善意、Cが善意でDが悪意、またはどちらとも善意、の場合は対抗できません。(「土地を返してください」と言えない。)

 

 

⑤心裡留保

冗談のつもりで話したことを《心裡留保》といいますが、この話を相手方が本気にすると相手方が《善意無過失》になり《有効》になってしまうことがあります。原則として心裡留保は有効になりますが、無効になる場合は次の二つがあります。

⒈《悪意》相手方が冗談を見抜いていた。

⒉《善意有過失》うっかり信じた。

1、2の場合は話していた側が「あの話は冗談です」と心裡留保が例外で無効にできます。

 

こちらも第三者が関わってくることがあります。

Aが冗談で「1万円でこの土地をあげます。」とBに話し、Bはその話を冗談と知りながらもCに「この土地をAから買ったのでCに転売します。」と話してしまったらAは何も知らなかったCに「土地を返してください。」と言えるのでしょうか?

答えは虚偽表示のときと同じく《善意の第三者に対抗できない》のです。

しかしAとBの間の心裡留保は無効なのでCが《悪意》だった場合はもちろん無効になります。

 

 

その他の事項

①権利能力

権利や義務の主体となることができる資格のことを権利能力といい、この権利能力は制限行為能力者にもあります。

②意思無能力者

酔っ払いなどの物事をしっかり判断できない状況の人のことを意思無能力者といい、この意思無能力者がした契約はたとえサインがあっても無効です。

③公序良俗

法律には社会の秩序を維持するという目的もあるので、公の秩序や善良の風俗(公序良俗)に反する契約は無効になります。

 


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